ゴミ収集もIoT化で効率アップ!廃棄物処理における現状・課題と成功事例
- 2024.11.24
近年、広がりを見せるIoT(モノのインターネット)は、私たちの生活の至るところで活躍しています。例えば、物流における商品の追跡機能などもIoTの1例です。このような流れを受けて、「ゴミ収集」に対しても導入されはじめており、IoTでゴミ収集業務が劇的に効率化されることが期待されているのです。
一方で、IoTにより具体的にどのようにして業務が改善されるのか、ピンとこない人も多いのではないでしょうか。そこで今回は研究機関の報告書などをもとに、ゴミ収集の現状や課題をまとめた上で、その打開策としてIoTが導入された事例を紹介します。
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ゴミ収集の現状と課題
ごみ収集の効率化を目指し、様々な自治体でゴミ収集の現状および課題を調査する研究が行われています。ここでは国内外の研究・調査の中で浮かび上がった課題をいくつか紹介します。
ゴミ収集の課題1:ゴミ収集車の移動効率
従来のシステムでは、ゴミ収集車が規定のルートをすべて巡回する必要があります。なぜならば、現場に到着するまでゴミの堆積量を知る方法がないからです。仮に堆積量が少なかった場合には時間や人的リソース、ガソリン代の浪費になります。また、CO2も余計に排出することになるので、環境保全の面でも切迫した問題です。
ゴミ収集の課題2:ゴミ収集時間が長い
ゴミ収集車の巡回ルートの中に、幅の狭い道路や一方通行、行き止まりなどがある地域では、先述の移動効率が悪くなり、結果としてゴミ収集時間が長くなってしまいます。更に近年では、ゴミステーションではなく、各家庭の前にゴミを出す「戸別収集」を導入する自治体も存在するので、以前よりも回収拠点が増加することも考えられます。戸別収集は高齢者や子育て世代がゴミステーションまでゴミを運ぶ負担を軽減するほか、責任の明確化による「ゴミ出しマナーの向上」などが期待されますが、その分ゴミ収集業者側の負担は増えてしまう可能性があるのです。また、収集時間の延長によって余分なコストが発生することも懸念されています。
ゴミ収集の課題4:不法投棄発見の遅れ
不法投棄されたゴミが長い間放置されるという問題は、どこの地域にでも起こりえます。そして不法投棄は環境汚染や新たな不法投棄を誘発するので、早急に対処する必要があります。しかしながら、実際には担当者が不法投棄を発見し、回収するまで長い時間を要してしまうという事例が見られます。そのため、不法投棄を発見した人が手間をかけず、迅速に収集担当者に連絡を入れられる体制づくりが大切かと思われます。
ゴミ収集の課題5:ドライバー不足
少子高齢化のあおりを受け、ゴミ収集業務に関しても人手不足が深刻です。労働人口の減少はもちろんですが、単純にゴミの収集運搬に必要な中型免許を持った若者の確保は容易ではないでしょう。そのため既存のドライバーにかかる負担が増大していることも考えられます。限られた人材で効率的にパフォーマンスを発揮できるようなシステム作りが急務です。
ゴミ収集の課題6:曜日による収集作業時間の偏り
曜日によって排出されるゴミの量が異なるため、曜日によっては収集作業時間が大幅に伸びます。そして収集人員の増加や収集時間の延長にともないコストが増えてしまうと、最悪の場合、他の分野の行政サービスの財源で補填しなければならない可能性もあります。また、単純に収集作業が午後にまで及んでしまうと、住民生活に一定の影響を及ぼすことも想定されます。以上のことから、コスト管理、行政サービス、住民生活を総合的に改善するには効率的な収集ルートの整備によって、収集時間を短縮することが必要だと考えられます。
ゴミ収集の課題7:収集作業による渋滞
海外の事例で、ゴミ収集車が収集作業中に道路をふさぐことで、渋滞を引き起こすという問題がありました。国内においても、例えば先述のように戸別収集の増加で収集拠点が増えた場合には、収集作業の時間が長くなり、渋滞の原因になることが考えられます。必要な場所のみに収集に向かうのが理想的ですが、収集拠点のゴミの堆積量がわからない以上は、全てのルートを巡回しなければなりません。
以上がゴミ収集の主な課題です。これらは収集作業員の作業効率と地域住民の生活の双方に影響する事項なので適切に対応することが求められています。そして、その対応策として現在有効とされているのが「ゴミ収集のIoT化」なのです。ここからは実際にIoTを導入した事例を紹介し、どのように課題が解決されたのかを解説します。
※出典:RILG 一般財団法人 地方自治研究機構「ごみ減量化及びごみ収集の効率化に関する調査研究」
IoTによる効率化事例1:神奈川県藤沢市のゴミ収集最適化
神奈川県藤沢市は慶応義塾大学と連携して、IoTを活かした街づくりに取り組んでいます。その一環として、ゴミ収集業務のIoT化を実施しました。具体的な施策は以下の通りです。
・ゴミ収集車で街中のゴミの量を撮影
ゴミ収集車にドライブレコーダーを設置し、街中のゴミを撮影することでゴミの量を計算しました。またそれによってゴミの総量だけでなく「収集地区ごと」の量が把握できるようになったようです。要するに、あらかじめ各地区のゴミの量が推測できるので、余分な巡回ルートや収集時間が削減可能になり、最終的に業務が効率化すると考えられます。
・不法投棄の投稿アプリを活用
ゴミを収集する市職員が不法投棄を発見した際、タブレット端末から写真・コメント・位置情報を投稿できるアプリを活用しました。従来は紙やFAXなどの紙媒体でのやり取りだったので、発見者から担当者への情報伝達が遅かったのですが、アプリの活用で当日対応が可能になりました。結果として市職員の1日当たりの作業量が2時間も削減されたそうです。また、不法投棄以外にも不適正排出(ゴミの分別が間違っている)について、アプリ内で住民に注意喚起することもできるようになりました。アプリ内では画像付きで説明できるので、住民も直感的に理解しやすいと思われます。
IoTによる効率化事例2:その他の地域のゴミ収集最適化
藤沢市の他にも、各地でゴミ収集のIoT化が行われており、一定の成果が出ています。ここではその事例を列挙し、実際に行われた施策と克服された課題について解説します。
・神奈川県川崎市
川崎市では街中の産業処理ゴミ回収ボックスにセンサーを取り付け、ボックス内の堆積量がわかるようにしました(見える化)。それによって各回収ボックスの溜まり具合を確認し、回収の要否を判断した後、ゴミ収集業者に最適な回収ルートが連絡されるシステムを構築しました。結果として、ゴミ収集の課題である「移動効率の悪さ」「収集時間の長さ」などが緩和されたようです。
実際に、ゴミ収集車の走行距離が16%短縮したとされています。また、業務効率化に成功したという事実から、将来的に「ドライバー不足」という課題を解決することも期待されます。
・バルセロナ
スペインのバルセロナでも同様の取り組みがあり、市内のゴミ回収ボックスにセンサーを設置しました。元々はゴミ収集車の収集作業によって渋滞が生じるという課題があったのですが、回収すべきタイミングが把握できたことで、渋滞が解消しました。渋滞の程度の差こそあれ、日本でも有効な施策ではないでしょうか。
・東京都千代田区
千代田区では使用済み小型家電の回収ボックスに重量センサーを設置しました。その結果リアルタイムで各回収ボックスの堆積量がクラウド上の管理画面で把握できるようになりました。更に重量が閾値に達したときにアラームが鳴る設定も可能であり、適正なタイミングで回収作業を行うことができます。
以上の様に国内外さまざまな場所でIoTが導入され、ゴミ収集の課題が解決されてきています。ゴミ収集業務の業務効率を考える上で、今後欠かせない技術となることでしょう。
テラモトの最先端IoTで効率的なゴミ収集を
IoTは業務効率化の重要なツールとして、近年さまざまな業界から注目されています。ゴミ収集もその例外ではなく、先述したようにIoTの導入によって従来の課題が解決されたという事例も報告されています。また、弊社においてもIoTによる作業環境の効率化に注力しており、施設内のゴミ箱のゴミ収集やトイレ清掃のIoTサービスを提供しています。働き方改革に伴う人手不足の解消や業務改善、品質の安定化を図る場合、解決策の1つとしてIoTの導入を検討してはいかがでしょうか。