新しい時代の働き方、過ごし方を支えるために ――スマートビルが向き合う“省エネ”と“人手不足”の未来
- 2024.12.05
将来のエネルギー問題を解決するために世界中が向き合う目標、SDGs。
今後、日本では避けられない大きな問題のひとつ、労働人口の減少。
現代の人々をとりまく課題と、働き方の変化に向き合う方法のひとつとして注目されているのが、『スマートビル』です。
オフィスビル、公共・商業施設、教育施設といった、たくさんの人々が利用する建築物にとって、これからは避けられないシステムといっても過言ではありません。
スマートビルとは?
空調設備や照明、清掃、通信、利用状況、セキュリティといったビルの運営に必要なものを、自動的に制御・管理するシステムが備わったビル(建物)のこと。
IoT(インターネット)やセンサーによって得られた情報により、設備・器具の管理やビルメンテナンスの補助を行い、利便性を高め消費エネルギーを効率化します。
インテリジェントビルと表されることもありますが、現在では多くが『スマートビル(smart building)』、日本の建築関連法での表記では『高度情報化建築物』と呼ばれています。
スマートビルの歴史
1984年アメリカで、現在のスマートビルに近いさまざまな機能を供えた高層ビルが建築されました。
その売り出しの際にキャッチコピーとして『インテリジェントビル』という言葉が使われ、スマートビルの認識が広まっていきました。
日本でも同様に1980年代からスマートビルが普及し始めます。
この頃導入され始めたオフィス用コンピュータのための配線の効率化と、機器の運用に必要な空調設備をそなえているビルが、スマートビルの先駆けとなりました。
1990年代頃にかけて高層ビル建築の増加とともに広がったスマートビルですが、当時は利便性を優先したシステムが中心でした。
建設や維持コストがかかるため賃料は高めの傾向でしたが、評判は高く人気もありました。
しかし、2000年初頭にかけて不景気の長期化や、スマートビルの供給過多により、次第に需要が下降し始めました。
AI、IoTの普及が、スマートビルを新たな形へ導く――BEMS(ベムス)
スマートビルが新たな形へと変化し始めたのは、AIとIoT(モノとインターネット)の普及です。
2000年代まで、コンピューターのための配線設備、空調設備の利便性のためのシステムが主でした。
その流れは、IoTというさまざまなモノがインターネットに接続できるシステム、AIによるデータ分析が取り入れられたことで、さらに前進します。
建物のエネルギーが、いつ・どれくらい使われているのかを“見える化”して管理するシステム『BEMS(ベムス)』がその代表です。
『BEMS』はオフィスビル、病院、商業施設などに導入され、電力などのエネルギー消費量を測定するだけでなく、AIによってデータ分析をし、フロアごとに最適な供給を行います。
『BEMS』では、建物内にシステム管理の場所を設けることが多いですが、最近ではリモートで管理するビルも増えてきています。
このシステムの活用は、光熱費のコスト削減だけでなく、エネルギー管理による省エネ化も推し進めます。
環境省の調査によると、『BEMS』普及率は2013年で8%程度でしたが、補助金の導入や環境意識の高まりによって、2020年には24%まで広がりました。
SDGs目標達成の年である2030年までには、47%程度に達する計画がたてられています。
現在のスマートビルに備えられているもの
BEMSをはじめとした、現在のスマートビルに備えられているさまざまなシステム。
その一部をピックアップしてみました。
照明、電力の自動制御
オフィスビルや商業施設など、時間帯やフロアによって利用者数が増減する場所があります。
センサーで利用数や人の動きを感知・分析して、照明・エレベーターやエスカレーター等に使用される電力を自動制御します。
必要な場所ではいつも通り使用でき、利用者がいない時にはエネルギー消費を抑えることができます。
空調システムの自動制御
適切な室温は、気候やその場所の広さ、人の密度によって大きく変化します。
利用者数や室温をセンサーで感知し、快適な温度になるよう自動調整を行います。
またコロナ禍においては、感染症対策のために換気が重要視され、室内の換気の目安となる「必要換気量」をモニタリングし、自動で換気を行うシステムの導入が広がっています。
セキュリティ管理や利用状況の可視化
大規模オフィスビルでは複数の会社が入居していたり、下層階を商業施設として展開しているケースが多くあります。そんな不特定多数の人が出入りするビルのセキュリティとして注目されているのが、顔認証等を使った入退館の管理システムです。
また、会議室・喫煙室・トイレなどの利用状況を可視化することで、オフィスや商業施設を利用する人が快適に過ごせるシステムも増えつつあります。
さまざまなデータの集積、分析による予測
IoTシステムによって集められた電気や水の消費量・人の動き・さまざまな施設の利用状況といったデータ。
それらはリアルタイムの情報を可視化するだけでなく、AIによる分析で予測をたてることができます。
省エネはもちろん、場所ごとの細かな混雑状況の予測は、感染症対策にも活かされています。
これからのスマートビルに求められる、もうひとつの課題の解決
スマートビルのシステムによって得られるもの――
限りある資源であるエネルギーの効率化、光熱費などのコストカット、利用者の利便性や快適度のアップ。
実は、それだけではありません。
今後避けることのできない大きな課題が、労働人口の減少です。
ビル管理では、各施設の清掃やゴミ処理といった、人の手で行うメンテナンス業務が多くあります。
しかし、そういった業務を担う人手はすでに減少・高齢化の傾向が始まっています。
今後はスマートビルのシステムを活かして、メンテナンス業務の効率を最適化することで、人手不足をカバーする必要性が高まっていくのではないでしょうか。
現在、注目されているシステムをいくつかピックアップしてみました。
TERAS BOX
テラモトが販売しているTERAS BOXは、施設内のさまざまな場所に置かれているゴミ箱の、蓄積量を計測するシステムです。
多くの施設では、ゴミの回収は時間ごとで定期的に各所を回る方法をとっていますが
TERAS BOXを使うと、ゴミ箱にたまっているゴミの量をリアルタイムで計測し、一定量を上回った際に回収を行えます。
また「どの場所のゴミ箱が」「どの時間帯に多く使われているか」といったデータ分析も行い、効率的な回収業務の予定をたてることができます。
※関連商品:TERAS BOX―テラスボックス―
TERAS PLACE
清掃手順の細やかさや備品の補充といった、手間が多く丁寧さが必要な業務。
さらに大規模なビルとなると、トイレの数が増え各階への移動の大変さも加わります。
テラモトが販売しているTERAS PLACEは、センサーによって個室トイレの利用状況を計測してくれます。
トイレの利用者が多いフロアや時間帯などをデータ化・分析し、効率よく清掃業務の予定をたてることができます。
スマートビルが向き合う“省エネ”と“人手不足”の未来
トイレだけでなく、会議室・喫煙室・共有フロアなど、清掃業務が必要な場所すべてで、利用者数やゴミの量の可視化・データ化が活かされています。
スマートビルのシステムは、利用する人、働く人、管理する人――その「場」に関わるすべての人に便利さと快適さを与えられるモノになるかもしれません。