新しいAI技術の始まり ――人手不足解決から創作活動まで、社会のなかで活きるAI――
- 2024.11.24
ここ数年で注目されている、AI技術。
情報の収集や分析といったAIの得意分野と、ロボットや各種システムを合わせて活用する現場は、日々増えつつあります。
さらに2022年、AIは創作や対話の世界での新しい一歩を踏み出し始めました。
AIって一体どんなモノ?
AIとは『Artificial Intelligence』の略称で、人工的な知能という意味。
一般的には〝人工知能〟と呼ばれています。
人間が問題を解決するときのように、データや情報を調べて考え、解決方法を考える――というような行動をコンピューターを活用して行います。
人では不可能な膨大な量のデータを分析でき、短時間で回答を提案できるのがAIの特徴ともいえます。
こんなところで!? 意外な現場で活躍するAI
近年、AIがいろいろな現場に注目され、取り入れ始めています。
そのなかでも意外な活躍を見せている現場を、いくつかピックアップしてみました。
農業の現場
いま日本の農協は、従事者の減少や高齢化が進み、人手不足・後継者不足に悩まされています。
それらを解決するため、農林水産省は2021年から、AIやロボットを使用した『スマート農業』を推進しています。
- 無人で自動運転をする耕運機や草刈り機、トラクターを取り入れる。
- AIや各種センサーを組み合わせ、土の状態や温度、湿度などを把握し、かん水や施肥を自動で行う。
- AIデータを使用し、作物の選別や仕分けを行う。
- ドローンや小型ロボットを使い、農薬など薬品散布を無人で行う。
このように、今まで蓄積されたデータをAIやロボット、センサーに使うことで、負担の多い作業を軽減させたり、熟練した経験が必要な作業を自動化しています。
医療の現場
医療や介護の現場でも人手不足は話題にあがりますが、なかでも医師の数は全国的に不足しています。
高齢化社会がすすみ医療の需要がどんどん高まったことにより、医師の過重労働も問題視されています。
さらに、地方や過疎地域では病院が少なかったり、無医村・無医療地域となっている場所もあります。
医師不足や、地域の医療格差を解決する方法のひとつとして、厚生労働省は6つの『医療AI』推進を始めました。
- ゲノム医療(遺伝子の変異を調べ、治療方針を決める判断材料にする)
- 画像診断支援(レントゲン・CT・MRI等の画像診断をAIが分析、医師とのWチェックで精度をあげる)
- 診断、医療支援(膨大な論文の解析・情報の検索による支援、僻地医療での患者情報の収集など)
- 医薬品開発(すでに開発されている薬品データを分析し、効果の高いものを開発)
- 介護、認知症(介護支援ロボットや認知症診断でのAI利用)
- 手術支援(AIを用いた手術ロボットによる医師の負担軽減)
現在、医療分野のAIでは『画像診断』が最も活躍しています。
まだまだ開発・研究途中ではありますが、人とAIが力を合わせて活躍できる新たな分野として注目されています。
婚活の現場
現在、恋愛・結婚がしたいと思っている独身の男女の多くが行っている『婚活』。
そのなかでも20代では、男性約27%・女性約25%が婚活に関わるサービスを利用したことがあるという調査結果も。
手軽に出会えるアプリの活用も増えていますが、結婚を意識した場合はいわゆる〝結婚相談所〟のような婚活サービスを利用する人も多くなってきています。
そんな婚活サービスのなかで広がりを見せているのが、AIマッチングシステムを利用する『AI婚活』です。
112問の質問に応えることで、価値観が近く相性が良い相手をAIが探し出します。
AI婚活は政府も注目しており、少子化対策の一環として、地方自治体がAI婚活システムを導入する際に支援を行いました。
カスタマーサービスの現場
銀行、ネット通販会社、交通会社、物流。
様々な形のサービスを提供する企業にとって欠かせないのは、顧客との窓口『カスタマーサービス』です。
カスタマーサービスは、多くの企業が電話受付で対応しています。
最近ではWEB上のオペレーターによるチャットで対応するところも増えてきました。
その様な中、AIによる自動音声や文章作成でのカスタマー対応が注目されています。
- オペレーターの労働負担、人手不足を軽減する
- いつでも素早く対応できるので、顧客を待たせない
- 受け答えで得たデータを蓄積し、マーケティングに役立てる
オペレーターが対応しなければならない問題か、AIの回答で解決できる問題を見極めることで、カスタマーサービス全体の質を向上できると言われています。
清掃の現場
オフィスビルや公共・商業施設、病院などで欠かせないメンテナンス(清掃)作業。
清掃作業の業界でも、人手不足・従事者の高齢化は大きな悩みです。
清掃のなかでも、とくにトイレはその施設の印象を左右してしまう重要な場所。
またメンテナンスのなかでも、清掃に次いで作業比率が大きいのがゴミ回収です。
そんな現場では、こんな風にAIが使われています。
- センサーを使用し、建物内の各施設(フロア・部屋・トイレなど)の使用頻度をモニタリング。
- AIで使われやすい場所・時間を分析し、清掃するルートを効率化する。
- ゴミ箱内のゴミ量をセンサーで把握し、回収タイミングを効率化する。
敷地面積が広い、階数が多く移動が大変な場所も多い建物でのメンテナンス。
人出不足を解消するために、より効率的に清掃できる作業ルートをAIが分析します。
TERAS BOX
テラモトが販売しているTERAS BOXは、施設内のさまざまな場所に置かれているゴミ箱の、蓄積量を計測するシステムです。
多くの施設では、ゴミの回収は時間ごとで定期的に各所を回る方法をとっていますが
TERAS BOXを使うと、ゴミ箱にたまっているゴミの量をリアルタイムで計測し、一定量を上回った際に回収を行えます。
また「どの場所のゴミ箱が」「どの時間帯に多く使われているか」といったデータ分析も行い、効率的な回収業務の予定をたてることができます。
※関連商品:TERAS BOX―テラスボックス―
TERAS PLACE
清掃手順の細やかさや備品の補充といった、手間が多く丁寧さが必要な業務。
さらに大規模なビルとなると、トイレの数が増え各階への移動の大変さも加わります。
テラモトが販売しているTERAS PLACEは、センサーによって個室トイレの利用状況を計測してくれます。
トイレの利用者が多いフロアや時間帯などをデータ化・分析し、効率よく清掃業務の予定をたてることができます。
※関連商品:TERAS PLACE―テラスプレイス―
新たな潮流〝創作するAI〟の誕生
これまでAIと言えば、膨大なデータを分析して、最も効率的・有効な答えを提示するというイメージが強くありました。
その分析データを様々な機械やシステムに組み込み、便利なサービスを開発する――従来のAIシステムはこれまで紹介したような様々な分野で活躍し始めています。
その様な中、AIの新たな一面が現れました。
画像生成AI
日本では2022年7月、画像生成AIが注目され始めました。
画像生成AIは現在このような方法でイラストを生成します。
- 欲しいと思っているシチュエーションを文章で打ち込み、イラストを生成
- ラフなポーズや色を置いた大まかなイラストを読み込ませ、完成イラストを生成
まるでプロが描いたような仕上がりのイラストが数秒で生成されることから、画像生成AIは話題を呼び、『AI絵師』という言葉が2022年SNS流行語大賞にノミネートされました。
最近ではイラストだけでなく、動画や3Dモデル生成の開発も進んでいます。
注目される技術の一方で、著作権問題など大きな課題も残されています。
会話型AI
AIの苦手な分野のひとつは、創作と会話と言われていました。
人間が質問したことに対して、自然な対話に近い形で答えることはAIには難しかったのです。
ところが、2022年11月に公開されたAI『ChatGPT(チャットGPT)』は、これまでとは段違いの精度で、人間同士の会話のような受け答えを行うようになりました。
『ChatGPT』は、海外の人工知能の研究開発機関が生み出し、誰でも自由に使うことができます。
ChatGPTのベースとなっている言語モデル『GPT』は、ネット上の様々な情報・文章・表現方法といった膨大なデータを学習します。
このため、まるで人と話しているような受け答え、小説や脚本の創作を行えるように成長しています。
しかし画像生成AIと同じく、著作権問題や情報の正確さの精査といった課題も多い分野です。
まだまだ課題はたくさんありますが、AIは成長し続ける分野。
少子化や高齢化など、日本が抱えている問題を解決するために、うまく共存したい技術です。